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崇峻天皇暗殺事件

蝦夷の行列が大和にやって来たのを見に行った厩戸の王子と兄の多米の王子。蝦夷は、東国から持ってきた品々を宮殿へと運び込んでいきます。その蝦夷の大酋長が倉橋の大王のもとに近づこうとした瞬間、東漢の駒が大王を刺殺。ここから、謎の連続殺人が始まるのでした。

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主な登場人物

あらすじ

厩戸の王子は、兄の多米の王子とともに大和の沿道で蝦夷の行列が来るのを待っていました。大和の人々も蝦夷に対して特別な差別感情は持っておらず、彼らが持ってくる毛皮などに興味を示していました。

その蝦夷の行列の中から1人の若者が厩戸の王子に向かって声をかけてきました。その若者の名は、チロンヌㇷ゚(大伴の志能備)といい、厩戸の王子の友人です。

蝦夷の隊列は、宮殿(みあらか)の前で止まり、大酋長のアヤカスが、東国から持ってきた土産の品々を積み上げていきました。倉橋の大王(崇峻天皇)は、アヤカスから東国の話などを聴き取ろうと階段のすぐ上まで身を乗り出します。すると、東漢の駒が、アヤカスの前から階段を駆け上がり、持っていた短剣で倉橋の大王を刺殺し、宮殿の裏手へかけ去って行きました。

東漢の駒を追う厩戸の王子とチロンヌㇷ゚。しかし、東漢の駒を逃してしまいます。

うまく逃亡できた東漢の駒でしたが、彼もまた持仏堂で変わり果てた姿で発見されるのでした。

読後の感想

タイトル通り、崇峻天皇の暗殺事件を描いた作品です。

主人公は、聖徳太子(厩戸の王子)です。

崇峻天皇を暗殺したのは東漢の駒で、これは史実です。その後、東漢の駒も謎の死を遂げ、さらに厩戸の王子の周辺で連続殺人事件が起こります。

物語は、厩戸の王子が様々な推理をしながら、事件の真相に迫るというもので、読み続けていくうちにサスペンスドラマを見ているような感覚になっていきます。

崇峻天皇は生前、身辺に邪魔者がいることをほのめかしていました。その人物が東漢の駒だったのか。しかし、東漢の駒は、後日、死体となって見つかります。しかも、誰も入ることができない持仏堂の中で。この密室殺人の謎を解き明かしていくところから、崇峻天皇を暗殺した黒幕に厩戸の王子が迫っていきます。

聖徳太子がなぜ天皇とならなかったのか、その推理も、なるほどと頷けるものとなっていて、読み応えがありますね。

本作では、現代で使われる言葉を大和言葉で表記しています。例えば、連続殺人という言葉は、その当時使われていなかったので、「あいつぐひところし」と振り仮名が打たれています。他にも、多くの漢語に大和言葉の振り仮名が打たれていますが、その中には、作者の造語も含まれています。造語はおかしいとの批判があるかもしれませんが、漢語を使わないようにしようとする作者の配慮が、読者を物語の世界に没入させてくれます。

日本の古代史には謎が多く、本作も、フィクションとノンフィクションが入り混じっています。こういう作品は設定に無理があるなと感じるところが、所々にあるものですが、本作は、そう感じるところがなく、すらすらと読めます。

推理小説が好きな方にもおすすめの1冊ですね。

崇峻天皇暗殺事件-豊田有恒
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