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花神(上)

長州人大村益次郎を主人公とした作品です。若き大村益次郎が、緒方洪庵の適塾で蘭学を学び、やがて宇和島藩の軍艦建造に関わっていきます。幕府の蕃書調所の教授手伝として小塚原で解剖を行う大村益次郎。その姿を偶然目にした桂小五郎によって、彼の運命は大きく変わるのでした。

主な登場人物

あらすじ

長州人の村田蔵六こと大村益次郎は、大坂の緒方洪庵が運営する適塾で蘭学を学んでいました。

蔵六は、弘化4年(1847年)に師の緒方洪庵の許しを得て長崎に学問をしに行きます。旅の途中、蔵六は岡山でシーボルトの娘のイネと運命的な出会いをしました。

長崎では奥山静寂の家に泊まり、医者としての仕事もしました。大坂に戻った蔵六は、塾頭として塾生に講義をしながら、自らも学問にはげみます。しかし、父の孝益が家業の医者を継ぐために実家に戻るように言ったため、蔵六は故郷である長州の鋳銭村に帰省することになりました。

嘉永6年(1853年)にペリーが浦賀に来航すると、宇和島藩主の伊達宗城が国産の黒船建造を計画します。蔵六は、二宮敬作の仲介により宇和島藩に仕え、提灯はりかえを生業とする嘉蔵(前原巧山)とともに軍艦建造に着手しました。

軍艦建造を終えた蔵六は宇和島を去り、安政3年(1856年)に江戸で蘭学塾の鳩居堂を開きます。また、幕府の洋学研究機関である蕃書調所(ばんしょしらべしょ)の教授手伝にもなりました。

安政6年10月29日。蔵六は、小塚原の刑場で処刑された女囚の解剖をすることになりました。蔵六は手際良く解剖を進めていきます。その姿を見て衝撃を受けた人物がいました。それは、桂小五郎です。

桂は、2日前に処刑された吉田松陰の遺骸を引き取りに小塚原に出向いており、その帰りに蔵六が解剖している姿を見ました。この時、桂が受けた強い衝撃が、蔵六の運命を変えるのでした。

読後の感想

幕末の長州藩士大村益次郎を描いた作品です。物語は、大村益次郎と名乗る前の村田蔵六の名で進んでいきます。

蘭学者であり医師であった大村益次郎の若き日の姿が上巻では描かれています。学問には非常に優れていた大村益次郎でしたが、人との交わりは、なんとも無愛想でした。村人が挨拶と共に天気の話をしても、夏は暑いのが当然だと言うほどの愛想のなさ。傍から見ていると、おもしろいなと思うでしょうが、実際に接した人は、きっと気分を害していたでしょう。

作中では、大村益次郎と同じく、緒方洪庵の適塾で学んだ福沢諭吉も登場します。大村益次郎との接点はそれほどありません。でも、福沢諭吉が大村益次郎に英語を共に勉強しようと誘ったり、緒方洪庵の通夜で2人が同席する姿が描かれています。

割と社交的な福沢諭吉に対して、無愛想な大村益次郎。相反する性格が、後の2人の運命を変えていったのかもしれません。

花神(上)-司馬遼太郎
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