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箱根の坂(下)

少ない租税で興国寺城の財政が逼迫する中、早雲は伊豆を手に入れなければならないと考え始めます。民衆から搾取するだけの領主を否定し、民衆の暮らしを楽にするため起ちあがった早雲。世はついに戦国時代に突入するのでした。

主な登場人物

あらすじ

早雲が治める興国寺城の租税は四公六民。軽い税に民衆は喜ぶものの、少ない税収では財政が窮迫します。そのため、早雲は伊豆を我が領地にしなければならないと考え始めました。

この頃、伊豆の足利氏で内紛が起こっていました。足利氏には、伊豆の民衆からいかに搾取するかを考えている者ばかりで、誰が後継者となっても民衆の暮らしが良くなることはありません。

早雲はついに決断します。伊豆を我が領地とすることを。そして、足利氏から見事に伊豆を奪うことに成功しました。

関東では扇谷上杉と山内上杉との間で争いが絶えません。早雲は扇谷上杉に味方して山内上杉と戦うことになりましたが、扇谷上杉の当主定正が討死し、苦しい撤退戦を強いられます。

伊豆に戻った早雲は急迫した財政の建て直しのため、ただ一点を考えます。それは関東に入ること。しかし、早雲が関東を手に入れることは世の秩序を壊すことになります。

それでも、早雲は関東を手に入れるため、箱根の坂を超える決心をするのでした。

読後の感想

箱根の坂の最終巻です。

北条早雲は他国を侵略して関東を我が物にし、日本全土を戦国時代に変えてしまった大悪人との印象が強いです。

しかし、箱根の坂を読み終えた後では、きっと、その印象が変わるでしょう。室町時代は、守護や地頭が民衆から搾取することだけを考えていました。民衆にしたら、自分たちが働いて作った物を奪われるだけです。そのような弱い立場にある民衆を解放するために早雲が現れたのです。

民衆を領主から解放し自由にする。早雲は戦国大名ではなく革命家と言えます。戦国時代は国の盗りあいではなく、搾取されるだけの民衆を旧権力から自由にしていった時代だったのかもしれません。

早雲は88歳でこの世を去ります。当時としてはかなりの長命です。時間をかけて計画を実行に移し結果を出した早雲だったから、長生きしたのでしょうか。そうではなく、結果を出すためにじっくりと時間をかけなければならないことを知っていたから、早雲は長く生きようとしたのでしょう。

箱根の坂(下)-司馬遼太郎
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