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天と地と(上)

長尾為景は62歳で妻をめとり男児を授かりました。虎千代と名付けられたその子を為影は自分の子ではないと疑い愛情を注げず勘当します。しかし、守り役金津新兵衛に育てられた虎千代は、長尾家を背負って立てるだけの立派な器を備えた成年に成長していくのでした。

主な登場人物

あらすじ

享禄2年(1529年)。62歳の長尾為景は長尾顕吉の娘袈裟をめとります。そして翌年に男児が誕生し、袈裟は虎千代と名付けました。これが後の上杉謙信です。

しかし、為景は自らが高齢であること、出産時期が早いことから虎千代が自分の子ではないのではと疑います。

この頃、為景は宇佐美定行との戦いに敗北します。為景は、宇佐美定行に味方する柿崎弥二郎(景家)の調略を計画し、見事、味方に引き入れることに成功しました。

柿崎弥二郎は、次の合戦で宇佐美定行を裏切り上杉定憲の首をあげます。その後、為景と宇佐美定行は和睦しました。

虎千代はすくすくと成長します。しかし、為景の虎千代嫌いは変わりません、やがて虎千代は元服して景虎と名乗るようになりましたが、為景に勘当され母袈裟の実家がある栃尾の本庄慶秀のもとに預けられました。

天文11年(1542年)。為景は越中での一向一揆を鎮めるため出陣します。ところが、為景は敵の計略にはまり討死。長尾家では、為景の長男晴景が新守護代になることが決まりました。

しかし、晴景が守護代になることを快く思っていない長尾俊景が挙兵。景虎の身にも危険が迫るのでした。

読後の感想

戦国武将上杉謙信を描いた作品です。

上巻では、謙信の父長尾為景を中心に物語が進んでいきます。

後の上杉謙信こと虎千代の幼少時代は、決して幸せだったとは言えません。守護代の子として誕生したので身分的には高いのですが、為景からの愛情を感じることなく育ちます。また、兄の晴景との間にも兄弟らしい交わりはほとんどありません。

しかし、そんな環境にもかかわらず虎千代は兄弟の中で最もたくましく育ちます。もしも、虎千代が為景に可愛がられて育っていたら、越後の龍と呼ばれる戦国武将にはなっていなかったかもしれません。

上巻で虎千代が元服して景虎と名乗って活躍しはじめるのは後半からです。前半は、当時の長尾家を取り巻く環境に多くの紙数が割かれています。この前半部分がないと、戦国時代の越中や越後の情勢がわかりにくいですね。

天と地と(上)-海音寺潮五郎
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